2010年9月28日火曜日

いもがら閑話⑦

新天地での生活のエピソードは続く。竹林の中での遊びに飽きた時は、谷川がわれらの遊び場となった。親族の叔父から譲り受けた歴史物の子供用自転車が自分の移動手段であった。5分ほど走るとそこには渓流があった。大きな岩がごろごろあってその間を水が流れているような川である。
この川原での遊び方はもちろん渓流釣りというのもあるが、自分の場合あまり釣りには親しんでいない。そこでしたのは大きな岩を飛び移ってゆくという忍者遊びであった。岩と岩の間をジャンプして時に身を隠すそんなことを繰り返す。また時には石投げに挑戦をし、水面に石をすべらせてそのジャンプの回数を競うというものである。そういう経験は手や足腰を丈夫にする格好の訓練場であった。
ただ時には失敗をしでかすこともあった。岩から岩に跳び移るときに注意をしていないと岩苔で足を滑らすことがあるのだ。一度そんな体験があった。川に落ちて、着ていた服は全部びっしょり濡れてしまった。幸い流されて溺れはしなかったが、一歩間違えばどうなっていたことだろうか。濡れたまま家に帰れば、家の人にこっぴどく怒られるだろうと不安になり、川原で服が乾くまで裸になって待っていた。この時は何事もなかったようにして家に帰った。
夏休みの渓流での水泳は、毎年恒例であった。この渓流での水泳は水泳禁止区域というものを避ければ、学校でも許可されたものであった。しかしながら、事故というものは、どこでどう起こるかは分からないものである。
ほんの2mくらいの川幅しかない場所を自分は潜ったまま彼岸に渡ろうとした。川は流れが速く、すぐに渡れるであろうと思って挑戦したのであるが、結局流されてしまい、自分は水底に沈んでしまった。意識が次第に朦朧としていった。遠くに光がきらきらとしているのが見えた。その光の方に行こうとしているうちに、はっと目が覚めた。自分は川原の陸の部分にあおむけになっていて監視員から人工呼吸を受けて口から水をはきだしているのであった。
あのまま光の方に行っていたらどうなっていたのだろうか。死というものと生というものの狭間で自分はその時さ迷っていたのではなかろうか。

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