2010年10月3日日曜日

いもがら閑話11

 新天地は九州山地の盆地の中にあった。南九州の背骨にあたる韓国岳や高千穂の峰を一望することができる。
四季折々に山々の見える風景は変化をした。春から夏にかけてはツツジが山の至る所で咲き、ピンク色になっているのが見える。夏の山々は深い緑色にかわる。秋になると空気が清涼になり、山々は青みが強くなってくる。冬が近づくと積雪するので、それまで遠くに見えていた山は距離が変わるわけでもないのに、ぐっと近くにそびえ立っているように見える。高千穂の峰は谷に当たるところは春先まで残雪があって切り立った山肌を印象づけるものであった。このような山々の様子の変化を学校からいつも見ることができた。南九州の山々の見える風景は自分に身近であったこともあり、今も心のなかに深い印象として残っている。
秋口に韓国岳に遠足で登山することがあった。快晴の日に山頂から見える周囲の光景はこの世のものとは思えない神秘的なものであった。深い青い色の空気の層を通して見える風景はまるで海の中を覗いているような不思議な感じであった。山頂から下方にはるかに小さく見える田畑や森や川や建造物は美しい宝石でも見ているような気がして、しばし我を忘れる瞬間であった。
鹿児島方面に目をやると、桜島がはるか遠方で噴火して白い煙をあげているのが見える。原生林の中にお椀を逆さにしたような形の火口湖が点在し、マグマの影響か、水の色が時々に変化してゆく。
こんな神秘的な風景はめったに見られるものではないと思う。まさに筆舌に尽くし難いというのは、こんな風景かと思う。

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